なぜ木は生えるの?
by srp - 2月 12th, 2011.Filed under: その他.
以前、小学生の生徒さんに「なぜ木は生えるの?」と質問されたことがありました。
いちおう私は「文系」ではありますが、まがりなりにも理科や生物を小中高と学んできた身です。これくらいちょちょいのちょいで説明できるだろうと思っていました。
それはね、まずは種の栄養を使って根っこを張ったり芽を出したりする。それからは根っこから土の栄養とか水分を吸ったり、葉っぱで光合成したりして、成長するためのエネルギーを作るんだ。そしてね……。
と説明していたのですが、どうも生徒さんは納得しかねる様子。はて、これほど簡単明瞭な説明もないような……?と思っていたところ、生徒さんが問うた「なぜ」というのは、そういう生える「メカニズム」のことではないようだ、ということに気づきました。どうやら生徒さんは、たとえば「なぜ人は生きるの?」という疑問と同列に「なぜ木は生えるの?」と質問したようなのです。つまり木が生える「意味」について尋ねていたのです。
さて、これは弱りました。地球温暖化を防止するためだよ……いや、これはあまりに人間中心過ぎるなあ。酸素を必要とする動物たちを養うためだよ……ううん、別に動物を生かすために木があるわけではないしなあ。種を存続させるためだよ……え?どうして種を残さなきゃいけないの、だって?それはその……ううむ。
木が生える「意味」を説明しようにも、なんだかどれもしっくりきません。結局、「木は生えるから生えるんだよ」と言うしかありませんでした。わたしたち人間にわかるのは「木は生える」という事実だけなんだよ、と。
生徒さんはそれでもやはり納得はできていないようでしたが、らちが明かないと思ったのかそこで問いかけを止めました。もし、さらに「じゃあ人間も?」と聞かれたら、どう返したらいいものか真剣に悩んでいたところです。もしかしたら、人間も「生きるから生きるんだ」としか言えないのかもしれないし……。
「なぜ木は生えるのか」という、大人なら「わかりきってることだろ」と一蹴してしまうような疑問でも、子どもは真剣に尋ねてきます。そうして問われていくうちに「あれ、そういえば、どうしてなんだろう?」とむしろこちらが悩んでしまう、そんなことが度々あります。子どもに真正面から向き合っていくことのおもしろさは、こんなところにもあるのだと思います(結局まともに答えられなかったんだから先生としちゃ失格だろ、と言われてしまえばぐうの音も出ませんが)。
みなさんもお子さんや周囲の方々に「なぜ木は生えるのか」を質問し合ってみてはいかがでしょうか。答えはひとつのように見えて、意外にめいめい異なった視点から「木が生えている」ということを捉えているかもしれませんよ。
※他に「どうして人は努力するの?」という質問もありました。SRPの先生の間でも、これの答えははっきりと別れました。
(斎藤)