SRP教育研究所

江東区森下・中央区月島の学習塾&研究機関「SRP教育研究所」の日常

震災と故郷

by srp - 3月 19th, 2011.
Filed under: その他.

 あの大きな地震から1週間が経ちました。東京は一時「買いだめ」による商品不足や、余震の警戒と節電のための電車の運休や本数削減などがあり、現在もなお予断を許さないとはいえ、少しずつ、平穏を取り戻してきています。わたしたち一般市民が普段の生活を送るのにはそれほど支障ありません。

ですが、被災地においては今なお厳しい避難生活を送っている人々がいます。ライフラインも物資も不足しているかれらにしてあげられることは、しかし今のわたしたちには非常に限られています。しかし、募金や献血、それに物資の援助(物資については個人で送るのではなくて、しかるべき機関の呼びかけに応じるかたちですべきかと思います)など、小さくともやれることはあります。現地にボランティア活動に行くのはまだ無理でも、みなさんのちょっとした「思いやり」が積み重なれば、被災者の方々の大きな助けとなると思います。

 さて。私(斎藤)は福島に生まれ、18歳まで福島で育ちました。実家も友人も福島におります。幸いにも、みな海沿いにではなく内陸部に住んでおりましたので、津波に巻き込まれることもなく無事でした。しかし、元福島県民としてひどく心を痛める事態が現在もなお進行しております。福島第一原発の事故です。

 現在も自衛隊や東京電力社員らによる決死の――文字通り、死を賭しての作業が続いております。私はかれらの勇気と尽力に心から敬意を表します。しかしいったい何人の方々が被曝によって身体を破壊され、命を落とすことになるのか。地震による直接の被害ではないものの、これもまた震災の悲劇です。

 原発の被害は、何も被曝だけではありません。私がもうひとつ心配しているのは、福島の農作物や水産物に対する消費者の「恐れ」です。Fukushimaの名は今回の事故で不幸なかたちで海外諸国にも知れ渡りました。いったい放射能で汚染されているかもしれない食物を、だれが口にいれるでしょうか?たとえどれほど審査をクリアしたとして、少しでも内部被曝の恐れがあると見なされれば忌避されてしまうでしょう。福島には大きな工場はありません。その代わりおいしい農作物と水産物に清らかで豊富な水、そして美しい自然があり、それが誇りでありました。ですが今、その「かけがえのないもの」が「毒におかされたもの」になってしまう。美しい故郷が穢されてしまうこと――これほど悲しいことはありません。

 原子力発電の発電量は全体の30%。わたしたちの生活の少なくない部分が原子力によって支えられています。その恩恵の源が、この度あの恐ろしい事故を引き起こしてしまった。私たちの生活が、ある大きな危険を抱えることで成り立っているという事実が突きつけられたわけです。この事実をわたしたちはどう受け止めるべきなのか。危険を承知でこれまで通り原発を稼動させ、増加する電力需要に従って増設していくか、それとも現状のライフスタイルを反省し、より安心できる生活への道を模索するか。今回の事故は、これからの私たちの社会の在りようを見つめなおし、子々孫々にいたる未来の人々にどんな社会を残していくべきなのか、そのような問いを喚起するものとして受け止めるべきなのではないかと思います。
(斎藤)

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